リギングの話
〜数値はこだわるべき?~
はじめに
配艇という日本独自の超特殊文化のおかげで皆さんリギングには自信があるのではないでしょうか?私はリギングが終わらず配艇時間内に練習が満足にできなくてよくクルーにドヤされてました。全国選抜にリグボックスを持って行き忘れたのが監督にばれて天竜の艇庫前で正座で説教受けたのはいい思い出です。英国に渡ってリギングで一番感じたのは「みんなめっちゃ適当やん」ということで、これはコーチング研修でもそうでした。リギングに関する指導内容がほとんどなく、元全英代表の監督だった人が「まあ足回り変えるぐらいでいいよ」というテンションでした。 ただこれはめんどくさいから言っているのではなく、物理学と力学の観点で根拠があるうえでこう言っているのが面白いです。
個人差を考慮するべきなのは足回りのみ?
これまでの研究により、クルーボートにおいてもっとも進行効率がいいのは「全員同じハイト(スイープ、スカル問わず)、足回りはピンtoヒールは自分の値、デプスはできる限りクルーで合わせる」とのことです。文献は最後の章に追記します。つまり、リギングにおいてそもそも個人間で調整する幅が狭いということらしいです。ただ前提として、ヨーロッパではボート競技者は身長が高く均一に近い(競技スタート時に推奨の身長基準を設ける国が多い)ため、全てのクルーにおいてこの理論が適用されるとは断定できないのでご留意ください。コーチング研修の先生曰く、ハイトの統一はリズムの伝わりやすさとバランスのとりやすさを考慮しても実施したほうがいいとのこと。「クルーそれぞれのハイトではなく、クルーがハイトに合わせて漕ぐべき」という考えは日頃英国で漕いでても浸透しているなと思います。僕のクラブではスカルは17 &18cm, スイープは18cmで固定されています。(艇種問わず)
下の写真は英国の推奨身長基準。でかすぎですね笑
じゃあこだわるべきではないの?
そういうわけでもありません。例えばスイープの場合、僕のクラブはめんどくさがって18cmですが、クラブによってはクルーを組むごとに統一のハイトをミリ単位で調整しています。代表ももちろんそうです。ちなみに去年の世界選手権のイギリスのシニア代表エイトのハイトは18.4cmです。艇のメーカーによって沈み度も変わるのでそこも考慮する必要があります。ピンtoヒールももちろん自分の値なので調整が必要ですし、デプスもクルー内で話し合ってできる限り調整する必要があります。
最後に
ヨーロッパではクルーは一日ごとに変わるのが常なのでリギングに時間をあまりかけられないという背景もおそらくあると思いますが、今のところ漕いでいてリギングによるマイナスな感触は感じていません。「日本にいた時あんなにこだわる必要なかったのかな」と思うこともありますが、どっちがいいかというのはここでは断定できませんので、あくまで情報提供という形を取らせていただいてます。
オフシーズン中に色々試して、ラップタイムが変わらずに漕ぎ味や良くなっていたら、検討しても良いかもしれませんね。
出典
※改訂版の情報なので年度が最新になっています
Jihong, Y., Kai, Y., Gangfeng, L., Jie, Z., 2020. Flexible Driving Mechanism Inspired Water Strider Robot Walking on Water Surface. practical innovations, open solutions. , 2020, Vol.8, p.89643-89654. Available from: 10.1109/ACCESS.2020.2993078
Ballow, J.D., 2010.Rowing and the same-sum problem have their moments. American journal of physics (AJP) ,Vol.78(7), p.728-732. Available from:10.1119/1.3318808
Lennart, M., Engleder B.T., Schulz, G., Winkert, K., Jürgen, M., Steinacker, A., Gunnar, T.A., 2020. The mechanical rower: Construction, validity, and reliability of a test rig for wind braked rowing ergometers. Journal of biomechanics. Vol.106, p.109833. Available from: 10.1016/j.jbiomech.2020.109833
Grigas, V., Legha, A., Sulginas, A., Tadas T.R., 2010. Rowing Force Simulation and Control System. Solid State Phenomena. Vol.164、 p.161-164. Available from: 10.4028/www.scientific.net/SSP.164.161