2000mエルゴと世界選手権での 順位の相関について

2000mエルゴと世界選手権での 順位の相関について

概要

本研究では、男女全階級(オープンカテゴリーと軽量級)の漕手638名をサンプルとして、2000mエルゴのパフォーマンスタイムが世界選手権の最終順位をどの程度予測するかを評価した。

エルゴのタイムをアンケートで調べたところ、23種目中17種目で世界選手権の最終順位と正の相関(P < or = 0.049)があった。最も相関が高かったのは、LM1X(r = 0.78; P = 0.005)、W1X(r = 0.75; P = 0.002)、M1X(r = 0.72; P = 0.004)、LM2X(r = 0.72; P < 0.001)であった。
線形回帰を用い,r=0.50 より大きい相関が見られた各競技について2000m エルゴによるパフォーマンスタイムに基づいた最終順位を予測する回帰式を作成した。
23種目中12種目は相関においてこの基準を満たしたが、推定値の標準誤差が大きいため中には負の相関がみられる種目(オープンのM4X、W8+)もあった。

特に8+といった漕手の人数が多い種目になるほど一概にエルゴタイムでは順位の推測ができなくなっていくことが今回の調査で判明した。

 

WRC(世界選手権)の最終順位とエルゴタイムの相関図のグラフの一部

 

男子オープンカテゴリーにおいて2000mエルゴタイムが速いのはM4+(平均 6min2 ±4 秒)、M8+(6min3±7 秒)M4X(6min3 ±8 秒)であった。
一方で女子オープンカテゴリー競技ではW8+(6min51±6秒)、W2-(6min53±7秒)、W4X(6min54±12秒)であった。これは、大艇は小艇よりも水上での安定性が高く、バランスに関する技術的な要求が低い。

つまり、大艇においてはバランスに関する技術的な熟練度ではなく漕ぎ手の体力が重視されるということであり、その評価軸がエルゴであるためこのような結果となっているといえる。
しかしここで重要なのが、少なくとも大艇においては世界選手権での結果とエルゴタイムの順位はあまり相関していないということである。

これは、
大艇になるほど、個人の能力値よりクルーとしてのユニフォミティのほうが艇速への貢献度が大きいためといえる。

この研究はエルゴ実施のタイミングやエルゴの使用モデルが統一されていないことを念頭に置くべきだが、それでもこの回帰式は世界ボート選手権で上位の順位を獲得するために最も確率の高い2000mエルゴのパフォーマンス・タイムを示しているといえる。

ボートチームでのクルー選考基準は、各指導者ごとに差異があると思うが、今回の研究結果を一つシーズオフの冬のトレーニング期間で試してみるのはいかがだろうか。
特に、選手の特性を活かしたクルーのマネジメントが可能になる一つの根拠として、今回のブログはリサーチをベースとしている。


引用

“Relationship between 2000-m rowing ergometer performance times and World Rowing Championships rankings in elite-standard rowers”

著者
・Pavle Mikulic
University of Zagreb

・Tomislav Smoljanovic
University Hospital Centre Zagreb

・Ivan Bojanic
University of Zagreb

・Jo A Hannafin
Weill Cornell Medical College

リンク

https://www.researchgate.net/publication/26693044_Relationship_between_2000-m_rowing_ergometer_performance_times_and_World_Rowing_Championships_rankings_in_elite-standard_rowers#pf4

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