【ローイングがもたらすもの】Vol.1:Adidas グローバルリードエンジニア Daniel-barnicle

【ローイングがもたらすもの】Vol.1:Adidas グローバルリードエンジニア Daniel-barnicle

ローイングには現役時代だけでなくその後のビジネスや家庭生活にまで影響を与えるものがたくさんある。これは映画「ソーシャルネットワーク」に登場した世界的実業家ウィンクルヴォス兄弟や、今日のインターネットの基礎を築いたwww開発者ティムバナーズリーといった実社会で活躍する元オアズマンの著名人が口をそろえていうフレーズである。すべてのオールを同時に前進させ、同時に後退させる努力。他の人と同調すること。視線を前方に集中させること。その瞬間にしか存在しない静寂と集中は精神が肉体を超える状態を創り出す。ローイングは改めて奥が深いスポーツなのである。

そんなローイングの普及と発展には競技人口の増加が最優先の課題であり、特に日本は喫緊の状況といえる。そこで今回は、国内の競技人口の増加に直結しているといえる、来たる新歓に向けてローイングの魅力を発信するため現在もビジネス界で活躍する元オアズマンである著名人たちの「ローイング回想」を紹介する。

今回はAdidasでエンジニアのグローバルリードを務めるDainiel氏のコラムである。アメリカのMcGill大学に所属しIRAchampionship(全米8+大学選手権)にて3位という栄光を手にしている。

1.モチベーションコントロール

トレーニングに打ち込む中で手のひらの皮が破れて血がにじむのを感じ、息が苦しくなってきたとき、意識を保つことは大変である。このとき、自分がなぜこのスポーツをやっているのかを思い出すことが非常に重要であり、それはその後の社会生活においても同様である。人生では何が起こるかわからず、辛く苦しくて倒れそうになった時に、レースには必ず終わりがあることを思い出すのである。どんなことでも意欲を失わず、努力を怠らず、やる気を失わないでいることでゴールにたどり着けることをすでに学んでいるはずである。

2. タフネス

朝5時30分起床。週9回の練習。吐くか気絶するまで自分を追い込むボート競技では、すべて当たり前のことである。オフシーズンにはどれだけウェイトを持ち上げられるか、500メートルをどれだけ速く漕げるか、何人よりも速く走れるか、といった数字による管理、序列がすべてである。一瞬たりともボートから目をそらさず、前のシートの人と完璧にタイミングを合わせ、気絶しそうなほど脚で蹴って追い込むのがローイングである。手のひらのマメを自慢できるのは、特別な人でなければできないことだ。スポーツのためにこのようなことをやっていると、人生において、十分な根性さえあれば達成できないことはない、と思うようになる。

3. 時間管理

フルタイムの学生で、他の課外活動にも参加している場合、他のことに時間を割くことは基本的に難しいだろう。食事はチームとの練習後に済ませ、睡眠も分単位で時間を計り、宿題は日中の空き時間や夜遅くまでやっている。たった1学期でこれらすべてをこなすと、優先順位付けと時間管理のプロになることができ、この2つのスキルは、ビジネスにも応用できる、最も価値のあるスキルです。


4. 無私の精神

ローイングでは自分のためだけでなく、それ以上に多くの人のために足で踏ん張り、オールを漕ぐのである。自分のボートに乗っている他の人たちのために、オールを引くのである。レースシーズンには、自分だけでなく、同じ艇に乗る他の8人の競技実績にも影響するため、オフシーズンは一生懸命にトレーニングをする。エルゴの上で自分の数字だけが重要だと感じることもあるが、ボートの中で他のクルーと完璧にタイミングを合わせて漕がなければならないとき、スポーツは一人の人間よりもはるかに大きなものだと実感するのである。現実の世界でも同じことが言える。自分中心に生きていると、結局は惨めな思いをすることになるのだ。自分のために生きながら、他の人のためにもなるような生き方をこころがけるようになる。

5. リーダーシップ

キャプテンであろうと、初心者であろうと、オリンピック選手であろうと、ボート競技を学ぶと、リーダーになることを学ぶ。能力を最大限に発揮できていないチームメイトに対して声をかけることは、適切な方法で行えば、自分にとって最高のことになり得るのだ。リーダーとは、常に人に指示を出すことではなく、コミュニケーションの取り方、委任の仕方、一歩下がって違う誰かにリードしてもらうタイミングを学ぶことなのである。人生においても同じように行動すれば、きっとグループでの活動が成功するだろう。

6. 謙虚さ

いつも勝てるとは限らない。いつも最速で漕げるわけでもない。常に目標タイムを達成できるわけでもない。でも、そうでありたいと思うのは当然のことである。しかし、敗北をどのようにとらえるかは、あなたがどのような人間であるかを物語っている。ムカつき、意気消沈し、負け惜しみを言うこともできる。あるいは、ムカついても、それを冷静に受け止めて、頭を使いながらもっと頑張ることもできる。後者を選べば、遅かれ早かれ成功を味わうことができると約束しよう。

7. 規律尊守

オールやエルゴのハンドルを握ると、自分の体を限界まで追い込むことが多くなるだろう。しかし、その度に少しずつ強くなり、上達していく自分を見ることができる。ボートのバランスを保ちながら、全力で漕ぎ、ゆっくりと回復する方法を、前の人と正確なタイミングで学ぶことができるのです。精神面だけでなく、肉体面でもこれほどまでに正確な動作が要求されるスポーツは他にないだろう。人生においても、締め切りや課題、仕事に対する姿勢に同じ規律を適用すれば、成功し続けることができるだろう。

最後に

私はAdidasにて、顧客及び従業員と相互に信頼を確立し、健全なケイデンスを見つけ、バランスの取れたプロダクトフローを維持しながら製品開発を進めることを仕事としている。動きのあったエイトのようにフローを見つけたチームは、顧客満足度の向上、業績の拡大、ベロシティの加速、品質の向上、そしてチームの幸福度の向上をまさしく実感している。私は、他でもこのエイトのような力強さ、正確さ、冷静さを兼ね備えたチームを目の当たりにすると畏怖と尊敬の念を抱いてしまうのだ。

引用

https://www.gameplan-a.com/2021/01/what-rowing-taught-me-about-leading-a-product-led-team/

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