「技術」も力なり
2016年、100m走アジア人最速の中国人短距離選手、蘇炳添の論文が中国国内で多くの注目を浴びた。蘇炳添は科学的根拠に則ったトレーニングの実践を徹底していた。コンピューターの生体工学シミュレーションにより、競技中の歩幅や膝の角度など、さまざまなデータを基に自身の身体的特徴を明確にした上で効率的なパフォーマンス向上のためのトレーニングを積んだのである。この科学的トレーニングの改善効果は顕著であり、怪我のために引退を考えていた蘇炳添は、アスリートでは「老後」と見なされる32歳で自己ベストを生み出すことができた。そしてこれは決して例外ではない。東京五輪では、30人以上のベテラン中国人選手(30歳以上)が金メダルを獲得したのである。パフォーマンスのピークは科学的根拠に基づくトレーニングを積むことで延ばすことができるということを証明して見せた。Embed from Getty Images
ローイングと科学「風洞実験」
これを参考に、ボート代表チームもこの蘇炳添の「チャンピオンモデル」に基づいて、高速カメラ、生化学分析装置、人工知能分析システムなどのさまざまなハイテク機器や技術を介して各選手のパーソナライズデータを作成し、競争力を高めるための包括的なトレーニングプログラムを実践した。
各選手の体格やローイング動作での癖、出力といった膨大なデータを基にそれぞれの種目適性を算出してクルーを組み、トレーニングを実践した。その中でも特筆すべきなのが、「風洞実験」によるクルーパフォーマンスの最適化である。中国の航空宇宙科学技術公団にある風洞実験室にて、実際に艇に乗せてローイング動作をすることで空気抵抗がどれほどあるかを測定し、そのデータを基にシート順やレンジを最適化していくものである。
スピードスケートやカヌーの代表チームもパフォーマンスの最適化のために使用しており、中国のスポーツ競技力向上にまさに一役買っている技術であるといえる。
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中国ローイングのヘッドコーチとして活躍する英国ローイング界のレジェンドSir Steve Redgrave
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一見意味があるのかどうかわからないものが多いが
各国がオリンピックメダリストを輩出させるために、様々なアプローチを行っている事を知ることは非常に重要と考える。
以下の映像は中国メディアによる風洞実験に関するニュースである。
出典:夺金赛艇项目获“风洞”技术加持,奥运奖牌的背后是科技(https://m.thepaper.cn/baijiahao_13949834)