現役高校ボート部生の皆さま、こんにちは。
また、ボート競技者のお子さんをお持ちの方、大学進学に悩んていませんか?
今回はNCSA(全米大学スポーツリクルートメント協会)での公表資料を基に実際にアメリカの大学にボートのスポーツ推薦で入るにはどういった条件があるのかを見ていく。
前例はないが日本の高校生にも海外の大学で漕いでいけるポテンシャルを秘めている選手がいるのではないだろうか。日本が真の強豪国になるためには海外でのトレーニングやレース経験、そして界隈の人脈が不可欠であり、そしてそれらの欠如がいまだ発展途上たる所以であるところは否定できないはずである。
この記事がわずかでも視野をより外に広げるきっかけとなったら幸いである。今回は実際に挙げられている選考に関わる要素をそれぞれ紹介していく。
1. 2K erg times
まっさきにこの要素が浮かんだ人が多いのではないだろうか?ぜひ下記図表をみてほしい。
Height (6.3=190cm, 6.1=185cm, 5.11=180cm)
Weight(195=88kg, 190=86kg, 180=81kg)
Tier1= 8+でIRA National Championship Regatta(=米国版インカレ 種目は8+のみ)の決勝に進出する可能性を秘めたエリートVersityプログラム。
ex)カリフォルニア大学バークレー校、ワシントン大学、イェール大学、ハーバード大学、プリンストン大学など。
Tier 2 =8+で常にIRA National Championship Regattaの出場権を獲得している強力なVersityプログラム。
ex)ウィスコンシン大学、ネイビー(海軍士官学校)、シラキュース大学、ペンシルバニア大学など。
Tier 3 =IRA National Championship Regattaへの出場、または8+でDad Vail Regattaの決勝に進出する可能性を持つ、競争力のあるバーシティプログラム。また、好調な年には、エリートクラブプログラムに含まれることがある。
- ex) Colgate大学、Drexel大学、Hobart学院、Temple大学など。
Tier 4 =Varsityプログラムおよびトップクラブプログラム。
- ex) ジャクソンビル大学、UCSB、ミシガン大学、トリニティ大学など。
2. Body size
海外の強豪大学の漕手は一般的に背が高く、強さがあり、体格の割によく動き、とてつもない運動能力を持っている。エリートクラスの場合、オープン級漕手は通常190cm以上の長身と95~105kg以上の体重がある。競技レベルが下がるにつれて、オープン級クルーの平均身長と体重は徐々に下がっていく傾向がある。
重要なのは、海外大学のコーチにとって、2kエルゴが速くてテクニックが優れていることは、195cm、100kgで2kエルゴが遅くテクニックが劣っている選手よりも重要であるということである。つまり体格がすべてということではない。身長は一般的に潜在的な上昇を意味し、長い手足は、より効果的な漕ぎストロークを可能にするよう評価されるが、絶対的な優位性とはなりえない。通常強豪校は背が高く、強く、無欠な漕手を好むが、もしあなたが数cm低くても能力さえあれば、自分の能力を示す機会を得ることは十分できると記載されている。
3. How to be Recruited
基本的には書類審査➡水上テスト (多くは2-での2000mと6000mT.T.)の流れで行われ、書類審査の段階でエルゴスコアと身長体重の足切りがある。むろん毎年世界中からトップの大学で漕ぎたい多くの高校生のエントリーがあり、競争倍率も決して低くない。ちなみに昨年のTier1バークレー校の倍率は15倍、Tier2のウィスコンシン大学は5倍である。
2kmエルゴタイムは、正確で信頼性の高い能力測定方法であり、上達の目安になる。漕ぎ手の技術が低い場合、エルゴタイムは必ずしもボートスピードに反映されないが、技術は鍛えれば改善できる。別の見方をすれば、毎年行われるNFLのテストマッチでトップの成績を収めた選手が、必ずしもNFLのベストルーキーになるとは限らない。しかし、コーチは常に強豪高校の成績優秀者を欲しがるもので、それはその選手が良い選手になる可能性が非常に高いからである。だからこそ、2kmエルゴのタイムが、大学のコーチが見るトップ項目になっている。特に米国の大学スポーツはプロスポーツ業界とそう大差ない仕組みになっている。
4. Why US rowing scholorship?
最後になぜ米国のスポーツ推薦なのかという話であるが、端的に言うと、オリンピックアスリートへのキャリアとしては非常に有効であるからだ。
ボート界で最も有名かつ、資産家でもあるWinklevoss兄弟は在学中にオリンピアンとなり、Facebookを創業したZuckerberg氏とのゴタゴタ騒動依頼、ビジネス界でも成功を収めている。(映画ソーシャルネットワークでの有名なシーンはこちら)
大きく考えられるメリットは2つある。
1.推薦を勝ち取る必要のある程の人気校は予算が莫大に有り、ウォータータンク等のトレーニング施設や設備、技術の会得方法に到るまで、すべてが最新である。それ故、大学からの要求値も高いので、自ずと競技力は向上し易い環境がある。
2. アスリートとして大成するのは重要なことであるが、アマチュアスポーツである以上、引退後のキャリアを考えると、米国でのボートと勉強の両立の経験は非常に将来に役に立つことが期待される。
国内では、現状大学卒業後も継続してオリンピックや日本代表選手を目指す場合、ボート部を有する企業への就職、またはスポンサーを探す必要があり、引退後のキャリアも選択肢が非常に少ない。
一般には、
・教員免許を在学中に取得しておき、後に教師として転職
・継続して企業で就労
・私立大学等のボート部コーチ
これらがメインでは無いだろうか?
ボート競技者として輝かしいキャリアが有りながら、もっと幅広い選択肢があっても良いかとは思うが、現状は残念ながら環境が整備されていない。
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Winklevoss兄弟はオックスフォード大学対ケンブリッジ大学の"The Boat Race"
にもメインスポンサーとして出資している。
大学の募集プロセスではやはり出身クラブや高校が重要な要素となってしまう分、日本の高校生には不利かもしれない。しかしTier1の大学にも、特定のスタイルのテクニックを教わっていない、運動能力の高い選手を登録することに興味がある場合も大いにある。実際に昨年IRAで優勝したカリフォルニア大学にはオーストラリア、トルコからの留学生がクルーに含まれている。
余談ではあるが、私が数年前に出場した欧州エルゴ選手権のアフターパーティーで出会ったキプロス人(当時17歳:LW 6:23)は高校卒業後、無事コロンビア大学の推薦(スカラーシップ)を勝ち取り、IRAでは対校ストロークを努め上げた。
彼と出会った当時は、キプロスオリンピック委員会が付きっきりで、彼の面倒を見ており、強豪国の有名校進学に有利になるよう欧州の各大会で成績を積み上げていた。
ぜひ皆さんも興味を持って「大学名、Rowing recruit」で検索してみるところから始めてほしい。
出典
・NCSA ” Rowing recruiment” HP
https://www.ncsasports.org/mens-rowing/college-rowing-times