はじめに
ボート競技は、ほかのチームがどのような練習をしているか知りやすい珍しいスポーツである。サッカーや野球のような視察などせずとも、水面に浮かんでいれば次々と色々なチームのクルーがそれぞれの練習に打ち込んでいるのが目に入ってくる。
しかし、違う水域、違う国、さらには五輪メダリストレベルの選手はどうだろうか。過去のWorld Rowingのレポートを参考に、レジェンド級の選手たちの練習量について探っていく。
FISA(現:World Rowing)による研究
FISAのSports Medicine Commission(スポーツ医学委員会)であり、多くのRowingに関する論文を執筆しているJuergen Steinacker教授の研究によると、1962~2002年の40年間のヨーロッパ各国のトップ選手の練習量とパフォーマンスの推移について分析した結果、パフォーマンス向上が見込める漕距離の上限は1シーズンにおいて6000kmとされる。(※この場合の「上限」とは、身体能力の向上が再現性を持ってみられなくなる閾値のことを指す。)
ローイングのシーズンは国によって若干異なるが、仮に凡そ3月〜10月とすると、月当たり700〜800kmの週6日稼働で一日25〜35kmは漕いでいる計算となる。また、この研究を基に算出された階層別トレーニングの強度を表したものが以下となる。
「漕いだ距離がものをいう」といった考え方は昔からあり、1990年代初頭にドイツのジュニアチームがシニアチームと同等量のトレーニングを積むようになった結果、国際大会にて毎年非常に優秀な成績を出し始めた事実は世界中に波紋を広げた。シーズン中平均で1日あたり190分ほどローイングのトレーニングを積んでいたという。
実際のトレーニング量の例
五輪金メダリスト Olaf Tufte の場合Embed from Getty Images
シーズン中は1週間での平均で11.1セッションの漕距離124kmをこなしており、トレーニング比率は7.2ローイング、 2.4ウェイトトレーニング、 1.5 陸上トレーニング(ラン・自転車)となる。そのうち67.7%のトレーニングはLowerゾーン1(Max HR比55%〜75%)の強度で行っている。
なお、週124kmをコンスタントに漕げる肉体の為に、彼は約10,000Kcalもの食事を1日で接種している。
ブルガリアの英雄 Rumyana Neykova の場合Embed from Getty Images
2008年北京五輪に備え、1年間で276日、566セッション(ウェイト等込み)をこなし、5510kmを漕ぎ切り見事W1Xで金メダルを獲得した。
最後にOlaf Tufteのスローモーションのローイングをご覧いただこう。【引用】
・row360 ”Who does what, and why?”
(https://row-360.com/who-does-what-and-why/)